大分建設新聞

四方山

分断社会に郷土料理を

2023年02月10日
 スペイン料理のパエリアに、あの食欲そそる鮮やかな黄色味を加える香辛料のサフラン。竹田市では明治時代から生産されており、国内生産量の8割を占めるという。「さふらんティー」などおしゃれな品もでき「日本一の産地」として竹田の魅力を生み出している▼黄色い米料理といえば、野菜たっぷりのかやくと合わせ滋味豊かな「黄飯」が臼杵の地の味として親しまれている。キリシタン大名の大友宗麟が南蛮貿易を行っていたことから、クチナシを使いパエリアを模したとも言われる。故郷を思う宣教師がクチナシでパエリアを作っていたかもしれない。「キリシタンの里」竹田の特産品としてサフランが育っていることに縁のようなものを感じる▼日田では、アユで作る塩辛「うるか」のほか、夏にいただける魚介類としてタラの胃を干した「たらおさ」がお盆に欠かせない。えらとはらわたを寒風にさらして乾物に仕上げるが、産地の北海道では食べられておらず、お盆に合わせ日田や玖珠地方に出荷されるというのは実にユニークだ▼関アジ、関サバ、城下カレイ、フグと大分の海の幸のうまさは格別だ。また、刺身をしょうゆなどのタレにつけた「りゅうきゅう」の名は、大分の漁師が沖縄(琉球)の漁師に教わり持ち帰ったとの説がある。ニガウリもよく食べられており、目線はゴーヤチャンプルーで知られる沖縄を越え、北から南から、はたまた世界に広がっているように感じる▼大分では長く、新たな文化を取り入れ育んできたことが、各地に伝わる豊かな食の面からもわかる。国内でも国外でもさまざまな場面で「分断」が際立つ混沌とした社会に求められているのは、そんなしなやかな人の有り様かもしれない。「10年に一度」の寒さの中、竹田のサフラン紅茶で温まりながら、ふとそう思った。(秀)
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