大分建設新聞

四方山

信頼

2023年02月09日
 「感性工学」という学問領域があることを最近知った。心地よさ、面白さなど目には見えないものと理論化し、マーケティングに生かそうというのが目的という。研究者の一人に工学院大学名誉教授の椎崎久雄氏がいる。その着眼点が何ともユニークだ。「柿の種」の理想的なピーナッツの割合に関する研究があるかと思えば、「回転寿司」のレーンの速度を論考した論文もある▼それによると、運ばれてくる寿司の速度は秒速4㌢だという。「客が寿司を視野に入れ、色やツヤを確認して手を伸ばすのにちょうど良いとされている」(『電気設備学会誌』2016年2月号の収載の「回転寿司の感性」)。これより速すぎると、客にとって吟味する余裕がなくなり、逆に遅いとイライラ感が増すという▼秒速4㌢に魅入られたのか、レーンに乗った寿司につばを付けたりする迷惑行為が横行してる。防止策として、レーンに流す商品は、注文品に限定するなどの措置を講じる店も現れたと聞く。自由に選べてこその回転寿司である。そのレーンの上には客同士の「信頼」も流れていたはずである。愚行が信頼を壊し、回転寿司という食文化をも揺さぶる▼各地で相次いでいる広域強盗事件。主犯格はフィリピンから、ネットで募った実行グループに指示を出していたという。遠隔操作である。多くのケースが宅配便業者を装ってドアを開けさせたと見られている。これもまた、社会に定着した宅配システムというライフラインの信頼性を傷つけようとしている▼他人のキャッシュカードで、100万円を引き出したとして別府署の巡査が逮捕された。県警は「違法行為を行ったもので、深くおわびする」とコメントしたが、違法どころか、1㍉の疑いのない犯罪である。自らが「信頼」を損ねているようにも聞こえた。(熊)
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