大分建設新聞

四方山

名前

2023年02月07日
 「悪魔ちゃん騒動」と聞いて、うなずくのは50歳から上の世代であろう。いまから30年前、1993年のことだ。わが子に「悪魔」と名付けて出生届を役所に提出した父親がいた。役所は保留にし、再考を求めた。裁判沙汰になったことで、世間に知られることになった▼「人に注目され刺激を受けることから、これをバネに向上が図られる」というのが父親の言い分だったが、結局、一般的な名前を付けたことで騒動は決着した。特異なことかと思ったが、そうではなかった。ほどなく私の周りにも「サラダ」に「マリネ」と名付けられた姉妹がいることを知った。姓は伏せるが、読み方によっては、野菜の名になることから「一度で名前を覚えてもらいたい」という親の願いが込められていると聞いた▼今であれば驚きもしない。タレントの野沢直子さんの2人の娘の名前は「真珠」に「珊瑚」。ミュージシャンのダイアモンド☆ユカイさんの2人の息子は「頼音」「匠音」と書いて、それぞれ「ライオン」「ショーン」と読ませる。俳優の的場浩司さんの娘は「宝冠」。頭をひねってしまうが、「ティアラ」だという▼戸籍に氏名の読み仮名が加わるに伴い、ルール作りを検討していた法制審議会の部会は、反社会的、差別的な読み方については制約を設ける方針を示した。約束事を守っている限り、事実上、いわゆるキラキラネームは容認される▼それにしても感心するのは、日本人の言葉の感性の豊かさだ。若者言葉で「本気」と書いて「マジ」と読ませたりする当たり、本質をついているようにも思える。外遊中に公用車で土産品を購入していたとして批判された、岸田文雄首相の政務秘書官の長男氏。首相は国会で「公務」と答弁した。「公私混同」を「こうむ」と読むようなことはないと信じたい。(熊)
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