大分建設新聞

四方山

経営とは

2023年01月31日
 別府のシンボルとして親しまれてきた「別府タワー」が再び帰ってきた。昨年5月から行われていた大規模改修工事が完了し、濃い灰色で武骨そのものだった鉄骨は、暖色系に一変した。避雷針が付け替えられたことで、全高は改装前よりも10㍍延びて100㍍にアップした▼名古屋テレビ塔、二代目通天閣に続く全国3番目の高層タワーとして1957年に完成した。開業から66年。その道のりは平坦ではなかった。資金難のため開業は予定より遅れ、テレビ放送用の電波塔として建設されながら、その役割を担うことはなかった▼景気の動向に左右される観光収入に頼らざるを得ず、何度かの経営的危機にも見舞われたとも聞く。今回も経営母体を変えてのリニューアルである。実は、鉄塔の高さ、色は創業当時に戻ったのだという。つまりは鉄塔も、時代の変遷のなかで変化していったわけである。それは、事業継続の難しさを身をもって示しているよう▼日本を代表するトヨタ自動車のトップが豊田章男社長(66)から佐藤恒治執行役員(53)に交代するニュースは世界を驚かせた。豊田氏といえば、リーマンショックで赤字転落した直後に社長に就任、業績をV字回復させるなど、日本の産業界を代表する一人である。経営者としては年齢的にもまだまだなのに、一回り以上も若い佐藤氏を抜擢した▼「1年たりとも平穏無事な年はなかった」。豊田氏の言葉に、経営者としての苦悩を見る。「私では(新しい時代に)変革はできなかった」とも心情を吐露した。事業継承への強い責任感である。別府タワーの設計者は、東京タワーなどを手掛け「塔博士」とたたえられた内藤多仲。こんな言葉を残している。「『積み重ね積み重ねてもまた積み重ね』が私の人生行路だった」。経営もまた同じなのであろう。(熊)
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