大分建設新聞

四方山

民主主義

2023年01月25日
 ロシア軍のウクライナ侵攻は長期化の様相を呈している。年明け未明のウクライナの攻撃で、ロシア軍に多大な被害が出て軍の責任を問う声も上がっている。一方、米国では下院議長が1回の投票で決まらず再投票になった。15回目の投票で決着したが、1923年以来の事態だそうだ▼そんな混沌とした世界のニュースを見ながら、ふと以前読んだSF小説「銀河英雄伝説」が頭に浮かんだ。今も新作アニメが作られている長寿の大作だが「腐敗した民主政治」と「善政の専制政治」のどちらが優れているかという究極の問いを投げ掛けた作品でもある。実際の政治と比べられるものではないが、改めて考えさせられた▼主人公ヤンは、学費がかからず好きな歴史が学べると士官学校に入る。卒業し赴任した辺境の星でもうだつが上がらなかったが、逃げ出した司令官をおとりに民衆を避難させ一躍英雄に。「ミラクル・ヤン」はその後も功績を重ね30歳で元帥にまで昇進する。だが、戦争嫌いのヤンは、名将も愚将も大量殺人者に違いはないと語ってみせる。戦場で「不敗」の名将は宗教集団の刺客に暗殺されてしまう▼作品では、テロが建設的な方向へ歴史を動かしたことはないと断じ、社会に広がる議員のわいろや汚職を「政治家の腐敗」、そんな政治家の腐敗を批判できない状態を「政治の腐敗」と、現代にも通じる問題を厳しく指摘した▼昨年の参院選は、応援演説中の安倍晋三元首相が銃撃で亡くなった直後の投開票だったが、低投票率は変わらなかった。民主主義は政治の失敗を人ごとにできない点に意味があると描かれた点も意義深い。日本の政治は悲鳴を上げ続けている。作品発表から30年以上たったが、全10巻、外伝4巻にちりばめられた「名言」の数々は、今も夜空の一等星のように輝いている。(秀)
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