大分建設新聞

四方山

蛇口から出る水

2023年01月16日
 中津市の三口浄水場を見学した。今の小学生は浄水場を社会見学するのだろうが、昭和の小学生にとっては新鮮だった。山国川から取水して、旧中津市内に配水される仕組みを聞いて、先人の努力と現代の関係者の日々の努力に頭が下がる思いがした▼日本の平均降水量は世界各国の2倍ほどあり、さらに水道技術が発達しているため、蛇口をひねればきれいな水を自由に使える。日本は水に恵まれ、風呂やトイレなどにふんだんに使える贅沢がある。しかし、世界には上下水道もなく、安全でない水を直接汲んで生活用水として使っていたり、トイレが衛生的に整備されていない国も多く、汚水に関連した病気が原因で多くの子どもたちが死亡する例が報告されている▼アフガニスタンでペシャワール会という組織を作り無償の医療活動を行い、不幸にも同国内で銃撃を受け死亡した中村哲医師は、自分のところに来る患者で、きれいな水さえあれば病気にならない人が多いことに着目した。そこで、白衣を脱いで作業着に着替えて重機に乗り、用水路の建設に取り掛かり、完成後は砂漠に緑を蘇らせ、アフガニスタンの人々の生活を一変させた。日本は水に恵まれているが、アジアという地域でみると決して水資源は多くなく、逆に人口は多いので水の需要は増えていくことが予測される▼一方で、コットンは環境に優しいイメージがあるが、原料の綿花栽培では大量の水が消費される。綿花はもともと水資源が乏しい国や地域で栽培されているので、水資源が少なくて済む方法で生産された「サステナブル・コットン」を積極的に利用する動きが世界ではすでに広がりつつある▼日本は資源の無い国と言われるが、豊かな水資源を国を挙げて守る時が来ている。きれいな水が蛇口から豊かに出る仕組みを学ぶ必要がある。(リュウ)
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