大分建設新聞

四方山

心の余裕

2023年01月05日
 車は10年、10万㌔で買い替え。よくそんな声を聴く。セールスマンも言うようだが、せっかく壊れないことで世界が認める日本車に囲まれているのに、なんとももったいない話だ▼友人が10万㌔以上走った三菱の軽自動車のエンジン内を、オイルの注ぎ口からのぞかせてくれた。普段の整備はオイル交換くらいと言っていたが、金属部品に錆びは見えず、新品のようで感動すら覚えた。「エンジンに壊れるところなんてそんなにないよ」と、製造から10年以上たった愛車で雨の日も雪の日も仕事に走り回っていた▼最近、1980年代の車の値が大きく値上がりしている。複雑な形の今どきの車にないすっきりしたデザインも魅力のひとつか。フェアレディ、117クーペ、ハコスカなど時代を彩った名車じゃなくても、なぜか古い車はシートに座るだけでワクワクする▼今の車は「エンコ」という言葉が死語になるくらい扱いやすい。防錆技術の進歩でさびさびの車も見当たらない。磨き込まなくてもピカピカ輝く。だが、そんな今だからこそ、たまの週末に古い車と向き合ってせっせとワックスがけするというのも粋ではないか。街でエンジンが動かなくなっても「まあこんなもの」といなせる心の余裕こそ、激動の今の時代に求められているものではないか▼急ぐ事情はあろうが、ゆっくり走る車の後ろに張り付いて無言の圧力をかけたり、高速道路の左車線から抜いたり、右に左に車線を変えジグザグ運転するなんて無粋でカッコ悪い。高騰する燃料の無駄使いでもある▼速い車が来たらよける余裕を持ちたい。後ろに気付かない人にもやさしく。旧車とのゆるい付き合いは心の持ちようを教えてくれる。大分の街並みや美しい景観には、そんな立ち居振る舞いが似合う。そのうちと言わず今すぐ改めたい。(秀)
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