大分建設新聞

四方山

一人親方

2022年12月22日
 いつものようにノートパソコンを開く。電源を入れていつものように、タッチスイッチの所に人さし指を置く。普段なら指紋を認証して、すぐに動き出すはずなのにまったく反応しない。それどころか「指の位置を変えてもう一度試してください」とメッセージが流れる。えっ、きのうまで問題なかったのに…。指先を見る。指紋が妙に薄くなっているようだった▼パスワードの代わりに、指先の文様で本人かどうかを確認する指紋認証システム。いちいち暗証番号を打ち込む手間はかからず、便利この上ない。パソコンだけでなく、スマホや銀行のATMなど広く導入されている。そんな話を知人の医師に話すと「コロナの時代、我々の世界では常識です」と笑われてしまった▼原因は、アルコールによる手指消毒にあるという。頻繁にアルコール洗浄を繰り返すと、皮脂が洗い落とされ、皮膚が露出することで、指紋の表面が削られ消失してしまうらしい。医師ともなれば病室などの移動のたびに手指洗浄を繰り返す。「コロナ時代ならではの受難です」と、その医師は笑った▼消失の危険性といえば、私たち業界の土台を支え続けている「一人親方」も重大な危機に直面している。12月7日付の弊紙一面は、一人親方の約1割が廃業を検討していると報じた。全国建設労働組合総連合などの調査結果。コロナの影響ではなく、国の施策が原因だ▼消費税のインボイス制度が来年10月から始まる。年間売上高1000万円以下の事業主は「免税事業者」として消費税の納付は免除されているが、新制度で免税事業者に仕事が回らなくなる可能性が指摘されている。同1000万円以下の零細企業は、企業全体の4割を占める。それだけに、社会に与える影響は大きい。新たなセーフティネットの用意が必要だ。(熊)
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