大分建設新聞

四方山

防衛力

2022年12月20日
 口さがない政治記者の間ではつい最近まで、岸田文雄首相に「遣唐使」ならぬ「検討使」の名を奉っていたという。閣僚の不祥事や、旧統一教会問題などへの対応について「検討する」を連発していたことにちなむらしい。ところがここにきて、宗旨替えしたかのように、大きな「決断」をした▼「専守防衛」を国是としてきた国の防衛政策について、相手国への先制攻撃を念頭においた、防衛力の強化にかじを切ったのである。タカ派で知られた安倍晋三元首相も、踏み込めなかった領域だ。攻撃力は米国にゆだね、わが国は防衛に専念するというのが、戦後一貫した日本の方針だった。それがハト派を自認する岸田氏の手で大転換される▼世相を一字で表現する「今年の漢字」は「戦」に決まった。かの地で惨劇が繰り広げられているウクライナ戦争だけでない。目の前の東シナ海では、中国が強大な軍事力を背景に台湾をうかがう。国民を不幸のどん底に押しやって、核開発に狂奔する北朝鮮はまるで花火のように、ミサイルを日本に向けて発射する。それを思えば日本の防衛は喫緊の課題である▼しかし、である。「特技は『人の話をよく聞く』こと」と言っていた岸田氏だが、「平和国家」の看板替えにもかかわらず国会での熟議や、国民への説明はほとんどなされなかった。「5年で43兆円」という防衛費総額を示したものの、積算根拠は定かでない▼国民の生命、財産を守るために「反撃能力」が必要だという。だが、本気で「守る」というのであれば、重要なことがある。防空壕の整備である。ミサイル攻撃下のウクライナで、市民の被害が抑えられているのは、シェルターの整備に負うところが大きいと報じられる。軍備増強だけに論点が絞られるのは、それこそ国民不在ではあるまいか。(熊)
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