大分建設新聞

四方山

断捨離

2022年12月16日
 コロナ禍で家にいる時間が増えた影響だろうか。不要品を捨てる「断捨離」が再びブームになっているようだ。断捨離という言葉は、物への執着を断ち切り、心を開放させるというヨーガの思想に根差しているとされる。だが、捨てること自体が目的化している気配も漂う。永久保存すべき6件の民事裁判の記録を廃棄していた大分地裁もそうだったのか▼2009年、剣道部の練習中に熱中症で死亡した県立高2年の男子生徒(当時17歳)の遺族が起こし、県などに損害賠償を命じた訴訟の記録も含まれていた。テレビ大分の取材に遺族は「判決は遺族にとってお守りのようなもの」と悲痛の声を上げた▼判決は、部活動での暴力行為が「熱血指導」の名の下に半ば容認されてきた風潮に、警鐘を鳴らした。遺族にとっては、顧問の刑事責任が問われない中、親として我が子の無念が認められた唯一の証しだったのだろう。「お守り」の言葉は重い。それをごみ扱いした地裁は「適切に対応したい」とコメントしたが、どう対応するというのだろうか▼一方で、わいせつ行為やセクハラを理由に、県警が2人の警察官を密かに懲戒処分していたことが明るみに出た。朝日新聞9日付県版の特ダネ記事。19年12月の処分対象は警察署所属の警部で、「わいせつな行為をするとともに、セクシャルハラスメント行為」をして戒告されていた▼所轄署の警部といえば課長クラスの幹部である。わいせつな行為ともなれば刑事事件ではないかとの疑念も湧く。公表しなかったことに、県警は警察庁の指針に従ったとしているが、こちらの方は断捨離ならぬ、隠蔽体質の気配も感じられる。心を解放するどころか、不信を招くだけだろう。法を執行する裁判所と警察がこの体たらくでは、国民の方から断捨離されかねない。(熊)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP