大分建設新聞

四方山

別府

2022年12月08日
 別府名物は、温泉、地獄蒸し料理だけではない。夜ともなれば、ネオン街に響く、つま弾くギターの演奏に乗せた歌声。ご存じ「流しのはっちゃん、ぶんちゃん」のコンビ、平野芳弘さんと小野高幸さんのお二人だ。コロナ禍の中、さぞかしご苦労がと思っていたところ、毎日新聞11月28日紙面に元気な近況が載っていた▼新曲「別府砂風呂サンバⅡ」を発表したとか。「♪地獄の底まで愛してる 二人の明日に 砂風呂サンバ」上人ケ浜の別府海浜砂場の情景をユーモラスに歌っている。温泉熱で暖められた砂の中に身を置けば、極楽、極楽…。湯量豊富な別府ならではの名所である。上人ケ浜の名前は、鎌倉時代の僧、一遍上人が九州上陸の第一歩を刻んだことにちなむという。時宗の開祖も温泉を楽しんだのだろうか▼約400年後に別府を訪れたのが、今日風に言えば実践的健康法『養生訓』を著した江戸時代の学者、貝原益軒だ。上人ケ浜はもちろん、別府の温泉地を巡っている。書き留めた旅行記には「湯の色淡泊にして蛤の汁のごとし」と書きつづった。ともに体に良いことを踏まえての記述だろう▼温泉地の知名度は、全国トップレベルの別府。ところが今年になって痛ましい事件で全国に知られるようになった。6月に市内で起きたひき逃げ死亡事故である。容疑者の26歳の男は逃げたまま。遺族は、有力情報を求めて懸賞金を出すことを決めた▼大学生の息子を亡くした両親の心中を思うと悲しい。逃走犯は性根がぐれていると見受けられる。不良を意味する「ぐれる」だが、遊びの「蛤の貝合わせ」で、模様が合わない組み合わせを「ぐりはま」と呼んだのが語源という。ハマグリにとっては迷惑な話である。ここは懸賞金よりも、警察の「地獄の底まで」追いかける覚悟の捜査を期待したい。(熊)
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