大分建設新聞

四方山

辛味

2022年11月25日
 今ではお馴染みのタバスコ。最初にあの小瓶を見た日のことは、半世紀近くも前だというのによく覚えている。高校時代、悪友とインベーダーゲームを楽しもうと喫茶店に入った。おなかがすいた。メニューと財布を見比べながら選んだのがナポリタンだった。一緒に出てきたのがあの小瓶である▼初めて見たが、「これかけるとおいしいんだよね」と、慣れたふりで目一杯かけた。ケチャップだと思い込んでいた。後の祭りである。スパゲティを口に入れた途端、火が噴き出しそうになった。悪友はそれを見てゲラゲラ笑う。嘘がバレバレだった▼タバスコの普及にひと役買ったのが、79歳で亡くなったアントニオ猪木さんだった。1970年代、自身が設立した貿易会社が日本での販売代理店になる、自らCMに出演するなど、日本人にとって未知の調味料の紹介に努めた。その後の激辛ブームの功労者の一人である▼免疫力アップも期待される辛み。ただ残念なことに、猪木さんの病は免疫力などが低下する「全身性アミロイドーシス」と呼ばれる難病だった。タンパク質のごみが体内に溜り、臓器の機能を奪う。高齢化で急増しており「人間の寿命が急速に延びる一方で、老化で生じるタンパク質のごみの処理に、人間の進化が追いついていない」(毎日新聞11月16日)のが原因らしい▼延びる寿命に肉体がついていけないというのも、皮肉な話である。世界の人口が80億人を超えた。わずか12年間で10億人が増えた計算だ。食料、エネルギーなど地球は耐えられるのだろうか。すでに4分の1に当たる約22億人が水不足に苦しんでいるという。そこに地球規模の気候変動が追い打ちをかける。猪木さんは自身の病を「最強の敵」と呼んだが、人類も「人口の爆発的増加」という厄介な敵と直面している。(熊)
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