大分建設新聞

四方山

ええじゃないか

2022年11月10日
 国東市武蔵町に伝わる国指定重要無形民俗文化財の「吉弘楽」。陣笠に腰蓑姿で、胸に抱えた太鼓を打ち鳴らして踊る。毎年7月の第4日曜日に楽庭八幡社で、五穀豊穣を祈願して奉納されている。吉弘楽を含め、全国41件の伝統的な舞いが「風流踊」として、ユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなった▼ユネスコの文化財登録というと、お隣の韓国や中国から文句が寄せられ、歴史問題化するのがお決まりだが、太鼓踊りであれば、文句の付けようもあるまい。とはいえ、数年前にキムチの起源を巡って韓国と中国の間で大論争が巻き起こった経緯がある。もしかして、打楽器を使った踊りも…などと気になってしまう▼歴史を振り返ると、社会の気分を反映するかのように、特定の踊りが大流行して、時代の変革のエネルギーになったことがある。貴族に独占された仏教が民衆に広がる契機となった、鎌倉時代の新仏教運動。新宗派が相次いで誕生した。その先駆けとして、踊りながら経文を唱える念仏踊りが大流行した▼幕末には、ごく普通の人々が仮装しながら「ええじゃないか」と連呼して熱狂的に踊りまくった。時には数日間にわたって続き、その間日常生活は完全に止まった。行き詰まった幕末という時代の中にあって、不満を爆発させるある種の民衆暴動と解釈され、明治維新の扉を開く原動力の一つとも考えられている▼今では「ええじゃないか」の掛け声は、お上から聞こえてくる。例えば自動車税制の見直しを進めている政府税制調査会である。走行距離に応じた課税を検討しているという。公共交通機関が整っていない地方にとって、自動車は移動手段の生命線。それだけに地方と都市の関係でみれば、露骨な「地方いじめ」である。「ええじゃないか」のはずがない。(熊)
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