大分建設新聞

四方山

嘘も方便

2022年11月09日
 「ウソを書け」―。30年以上前になるが、そんなむちゃな言葉を上司に掛けられたことがある。連日、CMでは「24時間戦えますか」の文句が流れ、世はまだイケイケのころ。新聞記者も「抜け、書け、寝るな」と休みを潰して働くのが当たり前だった▼「ウソ」うんぬんは、思うように原稿が書けない新人に、ユニークな表現で肩の力を抜くよう諭してくれたと受け取った。後に、だれが読んでもわかりやすい矛盾のない文章を書くようにという意味だったと聞かされたが、白髪が混じった先輩は、その後「いま、あんなことを言ったら大問題になるよ」と笑っていた。おおらかな時代だった▼凶弾に倒れた安倍晋三元首相は、桜を見る会の問題を国会で追求され、虚偽の答弁を繰り返した。まさか「ウソを言え」と言われてはいないだろうが、質問をはぐらかしての答弁はつじつまが合っていなかった▼まだ67歳だった。無念さは察してあまりある。「総理、総理」とジョークのように食い下がった辻元清美さんは、安倍さんが亡くなった直後に投開票された参院選で議員にかえり咲いた。政敵のいなくなった政界はさぞや寂しいだろう。元首相殺害の動機としてあがっている「旧統一協会」との関係は、祖父の岸信介元首相のころから続くとされる。他の議員にも同教団がかかわる事案が広がっている。岸田首相も重い腰を上げ、ていねいな説明を求めているが、真摯に応えない議員も散見される▼日本で元首相が殺害されるのは初代の伊藤博文ら複数いるが、戦後は初めてだ。いままた世界に広がる戦争の危機は、ウィットにとんだ人の知恵で切り抜けてほしい。二度とあのような悲劇が起きないためにも、政治と宗教の間に横たわる「闇」が白日のもとにさらされることを願う。政治家の傲慢は許されない。(秀)
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