大分建設新聞

四方山

ままかり

2022年10月20日
 臼杵料理の店で鯛味噌を頂いた。甘辛い味付けが温かいご飯に合い、箸が止まらなくなった。思わず「おかわり」と口から出かかった言葉を、膨らんだ腹を見て飲み込んだ。ふと岡山の郷土料理「ままかり」を思った。ニシン科の小魚を酢漬けにしたもので、「まんま(ご飯)」を隣の家に借りたいほどご飯が進むことから名付けられたという▼まさに鯛味噌は大分の「ままかり」かもしれない。シャレではないが、豊後水道で捕れた新鮮なタイを焼き、臼杵産の味噌で練り上げるのがミソ。でも、なんと言っても荒波育ちのタイが主役だ。いにしえの昔からタイは魚の王様で、奈良時代には「贄」と呼ばれる税として都に献上されていた▼平城京跡から出土した木簡には、紀伊国(和歌山県)などから塩漬けのタイが納められたという記述が残されているという。天下一の豊後産のタイも、政府機関があった福岡・太宰府に税として徴収されていたのではと、ついつい想像してしまう▼それにしても国家の徴税に寄せる執念というのは今もすさまじい。世界最大の乳製品輸出国として知られるニュージーランドは、ウシやヒツジなどの家畜のげっぷが温室効果ガスを排出させる要因になっているとして、農家に課税する方針を打ち出した。同国の温室効果ガスの約半分が家畜のげっぷ、尿由来というのが大義名分という▼日本でも1989年まで、トランプ類税という税金があり、トランプなどに課税されていた。いま、政府は防衛費の大幅増額を打ち出し、財源をめぐる議論が始まる。経済全体が疲弊しているなか、「ままかり」のお隣さんのような宛てがあるはずもない。一部の法人増税案に、財界からは早くも「国民に広く薄く負担を求めるべき」という反論が。げっぷならぬ「ため息税」でも創設するか。(熊)
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