大分建設新聞

四方山

内川聖一

2022年10月05日
 プロ野球ファンは、この時期になるとシーズン中のひいきチームの勝ち負けで一喜一憂の心境から、秋の落ち葉を眺めるしんみりとした感慨に変わる。今年も各チームから球界を引退する選手が発表され、また多くの現役選手が戦力外通告(クビ)を受けて球界を去る▼引退選手の一人に郷土が生んだ打撃職人、内川聖一選手がいる。今までに打ったヒットが2186本、生涯打率は3割2厘。プロの世界で生涯打率3割を維持した選手は彼を含めてわずか26人しかいない。さらに彼は右バッターとして横浜時代に3割7分8厘という驚異的な打率で首位打者になった。右バッターで彼を超えた者は現在もいない。「21世紀最高のアベレージヒッター」と言われる所以だ▼そんな天才バッターがここ数年間1軍からはずされ2軍生活を送っていた。ソフトバンクの黄金時代を築いた立役者の一人だった彼は、2021年のシーズン、2軍に落とされ一度も1軍に上げてもらえなかった。成績不振ではない。常時3割をキープしていたバッターである。そして失意のうちに退団、ヤクルトに移籍した▼しかしそのチームでも今年のシーズン、ほとんど2軍生活を強いられた。今年のヤクルトはセ・リーグで独走状態で優勝。「彼の出番、居場所はなかった」と評論家たちは冷ややかに言ったが、2軍での彼の打率は3割をキープし、若い選手たちのお手本となっていた。9月末、彼は引退を表明。10月3日、ヤクルトは内川ほか2人のベテラン選手を引退試合として出場させ、胴上げ、花束贈呈などのセレモニーを行った。新聞も美談調で報道▼ふざけちゃいけない。みんな、どこを見ている。まったく腹立たしい風景だ。そう、私は怒っている。怒ってこのコラムを書いている。郷土の天才バッター、内川聖一をしっかり見ろ!(あ)
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