大分建設新聞

四方山

お金のもらい方

2022年09月29日
 昭和は遠くなった。扇谷正造と聞いてもピンとくる人は少ないだろう。敗戦から間もない頃に『週刊朝日』の編集長を務め、辣腕ぶりから「週刊誌の鬼」と呼ばれた。ヒットした企画が著名人との対談企画だった。今では珍しくもないが、相手にとって不都合なこともどんどん聞き、ホンネに迫る手法は、当時としては斬新で評判を呼んだ▼対談会場でゲストに謝礼を支払うのは、扇谷の仕事だった。おもしろいことを言っている。お金のもらい方で、人間の器量が見えるというのである。阪急グループを築いた小林一三、電力業界再編のリーダーとして知られた松永安左エ門ら一流と呼ばれた経済人は、お金の入った封筒を拝んでから懐に入れた。一方でそのままポケットにしまいこむ経済人もいた▼扇谷は「拝むか拝まないかが実業家と虚業家の分かれ目」(共著の『おもろい人やなあ』)と、手厳しい。あの男はどうだったのだろうかとふと思う。東京五輪汚職で東京地検特捜部に逮捕、起訴された組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)のことである。紳士服大手、出版大手の両企業から賄賂を受け取っていたとされる▼総額は約1億2000万円。知人の会社などを使って迂回させていたというから、拝むことはなかったろう。その代わりに、大笑いしていたのでは…とも想像してしまう。事件は底知れぬ広がりを見せる。この男にとって五輪は「金のなる木」だったのだろう▼今度は五輪マスコット「ミライトワ」などのぬいぐるみの販売権をめぐって玩具メーカーから数百万円を受け取っていた疑いが浮上している。「未来」と「永遠」を組み合わせて名付けたというが、2021年開催の東京五輪が汚職まみれの大会であったことが未来に永遠に語り継がれると思うと、何とも皮肉だ。(熊)
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