大分建設新聞

四方山

村田投手と円安

2022年09月27日
 時折訪ねる酒場の棚にサインボールが飾ってある。「人生先発完投」と書かれている。サインの主は、元ロッテ投手の村田兆治容疑者(72)。闘志むき出しのプレーはファンを魅了し、プロ野球界を支えてきたレジェンドの一人である。にもかかわらず「容疑者」と書き添えなくてはならないのが悲しい。羽田空港の保安検査場でのトラブルが原因だった▼左足を高々と上げて、右腕を振り抜くダイナミックなフォームは「マサカリ投法」と呼ばれ、一世を風靡した。繰り出される速球は140㌔を超え、打者の目前で20㌢もストンと落ちるフォークボールでバッターを翻弄した▼まるで鋭く沈む魔球のように、急激な円安が進行する。円相場が1998年以来となる1㌦=145円台にまで急落したのを受けて、政府・日銀は市場介入に踏み切った。円買いドル売りの為替介入は24年振りのこと。年初には1㌦=115円前後だったのに、30円も価値を落とした。下落率はおよそ20%。73年に変動相場制に移行してから過去最大である▼輸出産業にとっては追い風かもしれない。だが、輸出産業を代表するトヨタ自動車の豊田章男社長でさえ「(原材料の)輸入価格やエネルギー価格の高騰によるデメリットが拡大しているのが現実」と弱気だ。無理もない。世界的な資源価格の高騰に、円安が追い打ちをかける。電気、都市ガスは軒並み前年同月比20%超の上昇である▼経済アナリストの間で指摘されているのが「物価高倒産」の急増だ。帝国データバンクの集計によると、原材料費の高騰や、取引先からの圧力で価格転嫁できないなどの事情で倒産するケースが過去最多を記録した。1~8月の物価高倒産150件のうち建設業が23%を占めるという。業界の不安を鎮めるような政府の対策が求められている。(熊)
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