大分建設新聞

四方山

台風の経験

2022年09月21日
 今回の台風14号には「過去に例がない危険な」という言葉が付いていたので、今まで以上に心配した。被災された方々に、心からお見舞いを申し上げる▼さて、過去に例がないと言われると、1991年9月27日に大分県を通過し、大きな風倒木被害をもたらした19号を思い出す▼この日、私は仕事で東京にいて羽田空港に向かおうとすると、駅に大分便は全便欠航という表示が出ていた。じゃあ新幹線で帰るかと東京駅に向かったが、新幹線も運休するという。そこで、寝台特急「富士」に乗り込んだ。同じボックス席には、その1年前に噴火した雲仙普賢岳のふもとの小浜町の町長さんと観光商工課の課長さんがいた。復興について国に陳情に出向いた帰りだという。課長さんは台風が通過中の長崎と連絡をとっていたが、列車の中では成す術もないと諦め、共に缶ビールを飲み眠りについた▼深夜ふと気づくと列車が動いていない。山陽本線で倒木のため運転を打ち切るとのこと。臨時の新幹線に乗り換え九州に向かった。広島から山口に入ると、倒れている電柱の多さに乗客から驚きの声が上がり、小倉から大分行きに乗り換えた列車の景色も、同じく折れた電柱と飛んだ屋根の多さに乗客からため息が続いた。この台風19号の過ぎ去った後は、多くの家屋が長い間ブルーシートで覆われた。青森ではリンゴの被害が多く、りんご台風とも呼ばれた▼今回の台風の規模として比較されたのは60年も前の台風だが、私たちはこの60年の間、台風だけでなく多くの災害を経験し、公共インフラも民間の建築物も強靱化が進んでいることを改めて実感した。また、国土強靱化に加えて、防災行政が組織的に進歩し機能して、被害の軽減に功を奏していることも実感する。その根底には建設産業の流した汗がある。(リュウ)
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