大分建設新聞

四方山

国葬

2022年09月08日
 「こぬ人をまつほの浦の夕凪に/焼くや藻塩の身もこがれつつ」。百人一首にも入っている藤原定家の秀歌である。姿を見せない恋しい人を待っていると、身が焦がれるよう。そんな心境を詠んでいる。恐らく定家のように、やって来ないバスを身を焦がす思いで待っていた利用者もいたのではなかろうか▼中津市で明るみに出たコミュニティーバスの不適切運行問題。あろうことか、一部路線ではコースの途中で折り返したり、時刻表を無視した運行が行われていた。1本や2本でない。今年4月から4カ月間では169便のうち半分ほどででたらめな運行が行われていたという▼「待ち人来たらず」は何も山間の町だけの問題ではない。安倍晋三元首相の国葬費用をめぐる問題も似たようなものだ。政府は会場費など式典にかかる費用として2億5000万円の支出を閣議で決めたものの、警備費などに関しては「国葬後に精査した上でお示ししたい」(松野博一官房長官)と、口をつぐんだ。税金を投じる国の事業にもかかわらず、である▼けれども世論に抗しかねたのか、6日になって16億円余に上ると明らかにした。金額もさることながら、政府の迷走振りは目を覆うばかり。賛否が割れる安倍氏の国葬をさらに混乱させかねない。国葬に賛成している人たちにとっても、そんなでたらめを望んでいるわけではあるまい▼国葬の演出については、1億7600万円でイベント会社が落札した。安倍氏が首相在任中に、地元支持者を多数招き「権力の私物化」と批判を招いた首相主催「桜を見る会」の会場設営を担当した業者である。これも演出かと思うばかりに何やら出来過ぎているよう。一般競争入札だったとはいえ、入札したのは同社一社。後々議論にならなければ良いが。安倍氏はまだ眠れない。(熊)
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