大分建設新聞

四方山

壁を超える

2022年08月30日
 何ともロマンあふれる研究だ。約5万8000年前に南アフリカから拡散したとされる人類。胃がんのリストとして知られるピロリ菌から人類の移動ルートを探る研究が大分大医学部の山岡吉生教授の手で進められている。毎日新聞8月21日付記事よると、ピロリ菌のタイプは民族集団によって異なる点に着目して分析した▼その結果、アフリカを出た人類はアフガニスタンを経由し、ヒマラヤ山脈北側を通って、ユーラシア大陸を東に進んで沖縄に到達したと考えられるという。途方もない時間をかけての移動である。それでも、ヒマラヤは巨大な壁となって人類に立ちはだかったようだ▼東北勢として初の甲子園大会を制覇した仙台育英(宮城)。スポーツ紙には「〝800年ぶり〟大にぎわい」という見出しが踊った。何ごとかと思えば、古代、東北の玄関口とされてきた「白河の関」(福島県白河市)が、深紅の大優勝旗が白河越えしたことを祝う地元の人たちで大いに賑わったと報じる記事だった▼東北の高校野球界にとって、白河の関は、まさにヒマラヤのような難所だった。「100年開かなかった扉が開いた」。そんな見出しで報じたのは、東北の地元紙『河北新報』。社名の「河北」は、明治政府から「白河以北一山百文(東北は値打ちがない)」と軽視された言葉にちなむ。反骨の精神である▼須江航監督の優勝インタビューは印象的だった。「青春ってすごく密なのに、そういうことは全部駄目と言われている」。コロナ禍で普通でない生活を強いられている全国の高校生をおもんぱかっての言葉だった。東北やら九州やらそういう壁を溶かし、密を奪われたいまの異常な環境に改めて目を向かせてくれた。子どもたちに限らず、私たちの日常が、である。コロナ3年目の夏。出口はまだか。(熊)
取材依頼はこちら
フォトkンテスト
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP