大分建設新聞

四方山

マダム・バタフライ

2022年08月26日
 名前からして華やかだった。日本のファッション界の草分け的存在、森英恵さんが旅立った。享年96。蝶をモチーフにした大胆なデザインは世界を驚かせ、オペラ王プッチーニの代表作に重ねて「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」と呼ばれた。亡くなる2日前までスタッフと打ち合わせをしていたというから、現役を貫いた生涯だった▼あまたある業績の中でも、1992年バルセロナ五輪での日本選手団公式服は記憶に残る。白ジャケットの背中には日輪があしらわれ、男子選手には日の丸入りの扇子を持たせるなど斬新だった。毎日新聞のインタビューに「日本の精神性を伝える斬新なデザイン」と讃え、その死を悼んだのは女子マラソンで銀メダルを獲得した有森裕子さん(55)だった▼バルセロナの4年前、ソウル五輪ではシンクロナイズドスイミングの水着を手掛けた。蝶を大きくあしらった豪華な一着。銅メダルを取った小谷実可子さん(55)は「森先生が力を貸してくださった『勝負水着』」(読売新聞8月19日紙面)と振り返った。優れたデザインというのは力を与えてくれるのだろう▼2020東京五輪での日本選手団の制服が思い出せない。ほんの1年ほど前だというのに、である。デザインコンセプトは「ニッポンを纏う」。大きく出た割には、写真をみると日の丸カラーの白と赤の上下で、想定内である。製作したのはAOKI▼異例なことにパラリンピックも任され、統一デザインとなった。テーマは「共生」。なるほど、大会組織委員会理事との持ちつ持たれつの関係の成果であろう。元五輪担当相は「苦労に水を差した」とのんきだが、正しくは「水泡に帰した」である。組織委がご託を並べるようによく使っていた五輪レガシーとは、腐敗だったわけである。誰が責任をとるのか。(熊)
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