大分建設新聞

四方山

神様

2022年08月17日
 「別府大仏」を覚えておられるだろうか。高さ約15㍍の奈良・東大寺の大仏をはるかに上回る24㍍という巨大な仏像だった。1928(昭和3)年に完成した当初は、「日本一の大仏」とうたわれ、別府の観光名所となった。建立者は地元の実業家。計画発表からわずか3年で作り上げた▼それもそのはず、銅像などではなく、コンクリート製だった。ただのセメントではない。全国から寄せられた遺骨、遺灰が混ぜられた。そのためかどうか理由は不明だが、年月の経過とともに劣化が急速に進み、昭和から平成に変わった89年に取り壊された。写真を見ると、お顔は柔和というよりも、無骨な九州男児のよう▼別府つながりのせいか、雰囲気が似ていると感じた。伝説のプロ野球投手、稲尾和久に、である。58年の日本シリーズでは巨人相手に4連勝を挙げて「神様、仏様、稲尾様」とたたえられた。生家は漁師。別府湾で小舟をこいで鍛えたとも伝わる。そうは言っても別府大仏に仏様とは、こじつけが過ぎるかもしれぬ▼だが、こちらは正真正銘の「神様」の誕生である。太平洋を渡った北米大陸で、投打の「二刀流」で活躍する米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平が「野球の神様」と呼ばれるベーブ・ルース以来「2桁勝利・2桁本塁打」を挙げた。104年ぶりの快挙に、新聞は「大谷『神様』並んだ」(読売新聞8月11日紙面)などと報じた▼「成功するとか失敗するとか僕には関係ない。それをやってみることの方が大事」。『大谷翔平の素顔』(佐々木亨著)によると、日本ハム時代、恩師の栗山英樹監督に、なぜ大リーグなのかと問われた時の大谷の返事だったという。ルースの言葉として知られている「三振を恐れるな」と通底する。洋の東西を問わず、神様の勝利の鉄則は同じなのだろう。(熊)
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