大分建設新聞

四方山

廃線JR

2022年08月02日
 収束に向かっているかと思っていた新型コロナウイルスだが、県内では猛威が吹き荒れている。感染者数は連日のように「過去最多を更新した」と報じられる。コロナ禍も3年目に入り、数えて第7波に当たるらしい。県福祉保健部によると、感染者数のピークについては「まだ先」との見立てを示しており、かつてない感染拡大も懸念される▼早くも影響が深刻化しているのが医療現場だ。あっという間に、およそ半分の病床が埋まってしまっただけでない。医療従事者、あるいはその家族が感染したりして、実際の医療現場の負荷は格段に高まっているという。だが、政府は社会経済活動を優先させ、行動制限は掛けない方針を堅持している▼思いもよらなかったような事態も起きている。JR九州は8月5日までの間、特急列車計120本を運休すると発表した。県内を走る博多―大分間の「ソニック」などが影響を受ける。新型コロナの感染拡大で、出社できない乗務員が急増。当面続くことを想定して、思い切った判断になった▼「コロナ禍」を大義名分に、これまで封印されていた赤字路線の存廃議論が動き出す。国土交通省の有識者会議がローカル線見直しの基準として「1㌔当たりの1日平均乗客数1000人未満」という目安を初めて示した。「廃線を前提としない」と但し書きを付けてはいるが、JR各社に、廃線に向けた自治体との協議にお墨付きを与えた▼JR九州の古宮洋二社長は「地元と話すいい機会」と歓迎する。対象は12路線15線区。だが既に廃線は始まっていると見る向きもある。2年前の豪雨で被災したJR肥薩線は、7割の区間が運休のままだ。浮き彫りになるのは、市場原理主義の前に、地方の生存権は一顧だにされないという現実である。このままでいいわけがない。(熊)
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