大分建設新聞

四方山

句読点

2022年07月12日
 「参院選は、句点の戦いだね」。知り合いの選挙プランナー氏は教えてくれた。句点とは、もちろん「。」のことである。政党ポスターのキャッチコピーは、句点が目立つというのである。例えば、自民党は「決断と実行。暮らしを守る。」。公明党は「日本を、前へ。」と、読点「、」まで使った▼「まっすぐ、つらぬく。自由と平和。」と、読点に加え、句点を二つも打ったのが共産党。斬新なのが「改革。そして 成長。」と、日本語表記のルールをやすやすと飛び越えたのが日本維新の会だった。一方「物価高と戦う」(立憲民主党)、「がんこに平和!」(社民党)と、句読点を排除したところは、おしなべて伸び悩んだようだ▼ポスターのキャッチコピーに、句点を入れると、その文言をより目立たせる効果が生まれるとされる。だが、これだけ句点がもてはやされると、差別化は難しそう。実は、自民党の「決断と実行。」は、田中角栄が首相在任中の1972年の衆院選で使ったコピーと同じで、句点があるかないかの違いだけ。半世紀たっても日本政治は変わっていないのかと、不思議な感慨にとらわれる▼大派閥を率いて選挙に強かった田中は、こんな言葉を残している。「選挙に僥倖などはあり得ない。流した汗と、振り絞った知恵の結果だけが出る」「握った手の数しか票は出ない」。街頭に飛び出ることの大切さを説いた▼言葉の力を信じ、遊説の先頭に立ち続けた安倍晋三元首相も、田中の信奉者の一人だったのだろう。その安倍氏が選挙戦の最中、凶弾に斃れた。自由な言論を暴力で封殺するもので、民主国家の根幹を激しく揺さぶった。戦争という悲劇を教訓に、戦後80年近く制度として磨き上げてきたはずである。今こそ堂々と「民主主義。」と掲げ、その価値をかみしめたい。(熊)
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