大分建設新聞

四方山

梅雨

2022年06月30日
 この時季にぴったりの楽曲とくれば、八代亜紀さんの「雨の慕情」を置いてほかに思いつかない。このまま雨が降り続けるとしたら、別れたあの人がやってくるかもしれない……。「憎い 恋しい/憎い 恋しい/めぐりめぐって/今は恋しい」。阿久悠が紡いだ歌詞を、ハスキーボイスで切々と歌いあげる▼しかし、焼き付くような強い日差しを前に、恋心を寄せる相手も「暑い 逃げたい」とばかりに、足はさらに遠のくことだろう。わずか17日間。観測史上最短の梅雨となった。異常気象なのであろう。だが振り返ると、季節の変わり目にあたるこの時期、過酷な天候が歴史を動かした▼NHK大河ドラマで注目を集める鎌倉幕府。新田義貞によって、1333年に滅ぼされた。梅雨だというのに、季節外れの北風が吹き荒れた。潮位は下がり、新田軍は海側から奇襲攻撃を仕掛け勝利した。予報士でもある田家康さんの『気候で読み解く人物列伝 日本史編』で知った▼もう一人が織田信長。豪雨の中で今川義元を討ち取った桶狭間の戦いがそうであったように、長雨の季節に大勝負に出た。武田勝頼軍を破り、一躍天下人に名乗りを上げた長篠の戦いも、梅雨時の決戦だった。三段構えの火縄銃の威力が十分に発揮されたのは、雨が降らなかったからにほかならない。空模様を巧みに読んだのだろう▼「空梅雨選挙」の参院選。物価高騰対策、安全保障政策などが主な争点である。焦点がある。77年の歴史を持つ社民党である。得票率が2%未満ともなれば政党要件を失う。「さみだれや名もなき川のおそろしき」(蕪村)。党幹部は「世論」という川の流れを、固唾をのんで見守っていることだろう。余談だが「つゆ」の語源は、食品が痛みやすい時季からの連想で「潰える」が転化したともされる。(熊)
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