大分建設新聞

四方山

交付金の行方

2022年06月28日
 古都・奈良を代表する世界遺産・法隆寺。コロナ禍で参拝者が減少し収入が落ち込む中、境内の整備費2000万円をまかなうため、ネットを通じて募ったところ、1週間のうちに1億円を突破したという。寺側もよほど驚いたのだろう。「想像を絶するご支援」と、俗っぽい言葉で感謝の気持ちを述べた▼返礼品も魅力的だ。50万円の寄付者には、国家鎮護を祈る「百万塔」(複製品)、宗教儀式で使われる「散華」が進呈されるとか。不謹慎だが「免罪符」という言葉が思い浮かんだ。16世紀にカトリック教会が信徒に向けて「犯した罪が許される」と言って販売した証書である。すべてがそうでないにしろ、返礼品目当ての寄付者も少なくないだろう▼こちらの方はまごうことなき浄財である。中津市の元収入役が自身の米寿記念として「市立図書館の図書の充実に役立ててほしい」と、市に100万円を寄付した。「小さな資金だが、多くの児童が育ってくれれば」とも述べ、奥塚正典市長は「本を購入し、大事に活用する」と応じた▼そうした中で、全国の地方自治体に配布された、総額約4兆4000億円にのぼる「コロナ対応地方創成臨時交付金」の使途に関心が集まっている。コロナ対策と銘打ちながら、石川県能登町は約2700万円を投じて巨大イカのモニュメントをつくったかと思えば、山形県舟形町は約670万円で縄文時代の土偶のレプリカを製作していた▼どう考えてもコロナ対策とは無縁である。長崎県川棚町にたっては、感染リスク回避を名目に幹部職員の公用車を購入していた。これが住民一人一人のための施策なのだろうか。実態としては、逮捕者が相次いでいる交付金詐欺事件と、どこが違うのかと思ってしまう。元は税金という浄財である。私たちはもっと怒っていい。(熊)
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