大分建設新聞

四方山

ありがとうとごめんなさい

2022年06月27日
 今のNHK朝ドラは、料理人になる夢を抱いて沖縄から東京へ出てきたヒロイン暢子のドラマだ。ある日シェフ代行に指名され、先輩男性たちの中で孤軍奮闘する暢子だったが、現場から上がってくる客の声にも、先輩たちの意見にも耳を傾けない暢子は、シェフ代行として失格の烙印を押されてしまう▼悩んだ末に相談をしたのは沖縄の母だった。母は、暢子の良いところは、大きな声で「ありがとう」と「ごめんなさい」を言えるところだとアドバイスする▼このシーンを偶然見て、私は以前の会社に転職した20代の頃の職場を思い出した。当時、先輩の中で厳しそうで冷たそうなOさんになかなか近づけず、苦手意識を持っていた。しかし初めて一緒に仕事をして驚いた。些細なことでも必ず「ありがとう」と言う。そして、自分の方が正しくない時や相手に譲歩を願う時は「ごめんなさい」と言ってから改めて自分の意見を提案する▼販売会社からくる増減のオーダーに合わせて生産数を調整するためには、現場の能力を分析して計画を作成し、日々の進捗状況を基に計画の変更を決定する。そのためには、部材の調達から出荷まで内外にわたる関係者のコントロールが必要になる。業務内容の異なる職場の人をつなぎ、日々の目標から年間の目標を達成するためには、いくら共通目標を持っていてもトップダウンだけでは現場は動かない。「現場の監督者はもちろん担当者のことまで熟知して、配慮を重ねた上でお願いをするんだ」と教えてくれた▼実は優しいOさんだが、雀卓を囲み、パチンコ台の前に座り、新聞の馬柱(競馬情報)に目をやるときには別人になる。勝ちに純粋なギャンブラーだったことも思い出した。Oさんは定年を機に会社を辞めたが、手書きの年賀状が届く。人との出会いは財産だ。(リュウ)
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