大分建設新聞

四方山

セダン

2022年06月21日
 「いつかは」という言葉を聞いて、思わず「クラウン」と思い浮かべてしまうのは昭和世代だろう。好景気に沸いた時代、大いにもてはやされた車種が高級感を競い合った3ボックス4ドアのセダンだった。だが今では、軽自動車、SUV(多目的スポーツ車)に押されて見る影もない▼ホンダのレジェンド、トヨタのマークXはすでに姿を消し、今夏には日産の看板だったシーマ、フーガが生産中止となる。クラウンですら、消えるのではないかという噂が絶えない。品のない言葉だが、バブルの頃、これらの高級セダンは、一部の男どもの間で「ナンパ専用車」と呼ばれた。女性を誘うには最適のアイテムと思われていたのだろう▼人気車種が様変わりしたように、若い世代の恋愛観も大きく移ろう。内閣府が公表した「男女共同参画白書」によると、20代男性の約7割、女性の約5割が「配偶者や恋人」がいないと回答。20代独身男性にいたっては、約4割がデート経験ゼロという実態も明らかになった。セダンがはやらないのも、むべなるかなである▼変化は若者だけでない。家族の姿も同様だ。1980年の家族構成は「夫婦と子ども」が全体の4割を占めていたが、40年後の2020年には単独世帯がほぼ同じ割合を占めるまでになった。「夫婦と子ども」世帯は今や2割ほどにすぎない。野田聖子男女共同参画担当相は「国の骨格が変わった」と語ったが、もはや昭和でないのだろう▼「欲望の時代」とも呼ばれる昭和のギラギラ感をむき出しにしているのが自民党を離党した衆院議員だ。18歳女性との飲酒だけでなく、破廉恥な行為に及んだことが報じられた。当の本人は286万円のボーナス欲しさか、雲隠れを決め込む。似つかわしいのは高級車などではなく、赤色灯がついた車ではなかろうか。(熊)
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