大分建設新聞

四方山

懐かしい味

2022年06月06日
 先日、同級生のK君から連絡があった。「ビワが食べごろじゃから取りに来い」と。K君が定年退職して帰郷した2年前から毎年連絡は来るけれど、忙しくて行くに行けなかった。今年はさらに忙しいけれど、せっかくなので気分転換に行ってみた▼ビワの木は、出荷をしないのでほったらかしだと言うが、袋をかけていない割には立派な実もなっていたし、自分で食べる分には十分だった。必要な実の収穫はすぐに終わった。大きな木だったので上の方の実はどうするのか尋ねると、鳥にやると言う▼もったいないと思ったが、父親が植えた古い木なので、ゆくゆくは処分するつもりで、将来きちんと出荷するために自分で植えた木を見せてくれた。K君は定年退職後、実家の畑を使っていくつかの作物で農業チャレンジをしている。定年後なので投資はできないから、小規模で珍しい果実にチャレンジし、生計は安定した野菜を選んで育てている。ビワを収穫した帰り道に畑を回りながら、今の農業事情を教えてくれた▼日差しが強くなってきたので汗びっしょりになるかと心配したが、心地よい風もあり、畑で過ごした時間は気持ちの良いものだった。ビワを採りながら、子どもの頃住んでいた家を思い出した。建物はボロボロで傾いていたが、小さな畑の脇にはビワをはじめ、サクランボ、イチジクの木があった。畑からの帰り道に桑の実を見つけて、50年ぶりに食べた。懐かしい味だった▼帰り際にK君が、まだ熟していない実は炭酸レモン水で煮ると缶詰みたいになると教えてくれた。試してみると確かにビワの缶詰だ、甘い。ただ、缶詰のように甘いビワよりも、そのままのほんのり甘くみずみずしいビワの方が、50年前の思い出の中にいる私には美味しく感じた。懐かしい思い出をくれたK君に感謝だ。(リュウ)
取材依頼はこちら
環境測定センター
arrow_drop_up
TOP