大分建設新聞

四方山

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2022年05月26日
 NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が面白い。なかでも気弱な流人にすぎなかった源頼朝が権力を掌握するにしたがって、非情な面を次第にあらわにしていくところなど、演じる大泉洋さんの芝居のうまさも相まって、人間という摩訶不思議な存在が恐ろしく感じられるほどだ▼「恐ろしい」といえば、頼朝の長兄義平である。平家によって討たれたが、その勇猛ぶりから「悪源太」と呼ばれた。「悪」というと、悪人のイメージを描いてしまうが、当時は「憎いほど強い」という意味で、褒め言葉として使われたという。言葉は時代とともに変わるということだろう▼バブル経済が崩壊した30年ほど前、「悪魔ちゃん騒動」が世間を賑わせた。我が子に「悪魔」と命名した父親がその出生届を役所に提出した。役所は「妥当でない」として受理を拒否したことから裁判沙汰に。父親は「阿久魔」という代替案も提示したが、役所がそれも拒絶したことから、まったく新しい名前をつけることで決着した▼騒動から30年後の今、同じような事態が起きたら違った展開になったかもしれない。戸籍に読み仮名をつけるための戸籍法改正を検討している法制審議会の部会から中間試案が示された。何と「空(スカイ)」「光宙(ピカチュウ)」といった、キラキラネームが認められる可能性が高いという▼引き合いに出されたのが、人名で特殊な読み方をする「名乗り訓」の存在。「頼朝」の「朝」の字を「とも」と読ませるのが代表例。「いい国(1192)つくる頼朝さん」で、鎌倉幕府の年号を覚えた世代としては、頼朝が人名にまで影響を及ぼすとは感慨深い。ところが、最新の研究では「いい箱(1185)つくる頼朝さん」が正しいとか。世は移ろいやすいとはいえ、キラキラネームはどこか解せない。(熊)
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