大分建設新聞

四方山

進取の気性

2022年05月24日
 長い時を超えて歴史の封印が解かれたのであろう。長崎県諫早市内の古い墓地で見つかった遺骨が戦国時代末期、ローマに派遣された「天正遣欧少年使節」の1人、千々石ミゲルと分かった。墓石に刻まれた年代と、副葬品が決め手だったようだ▼派遣の中心的な役割を担ったのは、郷土の先覚者にしてキリシタン大名の大友宗麟公。主席正使を務めたのは、宗麟の縁者伊東マンショ。使節団は4人で、伊東も含めていずれも10代前半の少年たちだった。出発は1582年2月で、目的地のローマに着いたのは85年3月のこと。実に3年がかりのグレートジャーニーだった▼それだけではない。日本人が欧州に足を伸ばしたのは事実上、初めてとされ、少年たちによって「日本」という国の存在が西洋世界に知られるようになった。言ってみれば、大分の先人による偉大なる功績である。そうした冒険心の松明は受け継がれているようだ▼本県出身で欧州を拠点に映画プロデューサーとして活躍する吉崎道代さん(76)という女性がいることを知った。高校卒業後、単身ローマに渡り映画界に飛び込んだ。アカデミー賞(美術賞など3部門)に輝いた『ハワーズ・エンド』(1992年、ジェームズ・アイボリー監督)などのヒット作の製作に携わった。「失敗しても失うものがない強みが『飛ぶのが怖くない』」につながったと、自著『嵐を呼ぶ女』で述懐している▼戦国の昔も、太平の昭和も、進取の気性に富む先人がローマを目指したのがおかしい。そして時代は令和。ローマを飛び越えて目指す先は宇宙である。そう、大分空港を「宇宙港」にする計画がいよいよ動き出す。人工衛星を手掛ける米企業が「早ければ今年後半にも打ち上げる」と言明した。こちらの方は、失敗することなく無事の飛翔を祈りたい。(熊)
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