大分建設新聞

四方山

病は気から

2022年05月20日
 少し前にこの欄で、実家の固定電話から久しぶりに私のスマホに電話がかかってきた話をした。結論から言うと、スマホをどこに置いたか分からなくなった母が「スマホを鳴らしてみてくれないか」と、固定電話からわざわざこちらに電話をかけてきたというズッコケ話だったのだが、母のトンデモ話はこんなものでは収まらない。それこそ「山のように」ある。そんな母が、最近元気がない▼「病は気から」とよく言うが、あながち間違いではない。外出が好きで、人と話すことも大好きな母。しかしコロナ禍でその機会を無くし、この数年でめっきり老け込んでしまった。仕事もしていないため、外に出てもせいぜい買い物と病院程度。実家に顔を出すと、以前よりうれしそうにしているのが見ていて辛い。コロナはこんな高齢者の、日常の些細な楽しみも奪ってしまったのか、と▼気が弱くなると、それまで気にならなかった体の小さな異変も、大いに気になるらしい。あちこちの病院を渡り歩いているのだが、一丁前にiPadで事前に病状を調べてから行くので、先生に「○○病じゃないですか」などと言って困らせている。自分の思う病気だと認定してくれる先生に出会うまでの、それなりにお金もかかる「ホスピタルショッピング」だ▼年齢に伴う血圧などの諸問題はあれど、母は至って健康。弱ってしまったのは体ではなく、メンタルの方なのだろう。元の日常が少しずつ戻ってきていることを実感する度、母の「若返り」も近いのではないかと期待している▼先日、久しぶりに実家のトイレに入った。目の前の棚に「華やかに香る」と書かれた芳香剤と「強力消臭」と書かれた消臭剤が並んで置かれていた。意味がないじゃないかと母に言うと、あぁそうかと大笑い。またエピソードが増えた。(万)
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