大分建設新聞

四方山

地滑り発生から5年

2022年05月18日
 2017(平成29)年5月16日、豊後大野市朝地町綿田地区の地滑り発生から5年になる。大規模な地滑りが発生した地域は、ブランド綿田米の産地で田植えの準備に追われる時期だった。地元農家から「自宅の庭が地割れしている」「田んぼに水を入れたが、翌日無くなっていた」という声を聞いた。また、熊本地震との関連も疑われた▼私が取材で現地に入ったのは、規制がかかる前の22日早朝だったと記憶している。まだ、それほど幅の広がっていない地割れの写真撮影や、偶然居合わせた地元農家の人に取材した。この時、空撮で見たわけでなく地割れが規模の大きな地滑りとなっているなど、未経験の私にはまったく考えられなかった。当日の昼前に市役所では災害対策会議が開かれている▼調査要請を受けた土木研究所(茨城県つくば市)の藤平大上席研究員(当時)らは、東西約250㍍、南北約400㍍におよぶ巨大な地滑りであることや、地下水の影響が考えられること、熊本地震との関連は薄い―などの見解を示した。時間が経過するごとに地割れの幅は一段と広がり、一刻も早いボーリング調査を実施して滑動を食い止めることが最優先となった▼1964(昭和39)年8月16日「広報あさぢ」に、綿田の地滑りが掲載されている。規模は水田約1・3㌶、2㍍50㌢程に陥没していると報じている。この時の地滑りは現在、平井川に新設された砂防堰堤付近と思われる。字名は「引地」と呼ばれているが、中津市耶馬溪町金吉の地滑りとは違って比較的ゆっくりした滑動だ。周辺は有史以前から地滑りが起きていた可能性も否定できない▼当時、現場の取材先で地下水の排出や、護岸が壊れた平井川の応急工事に休むことなく取り組んでいる建設関係者に、多くの地元住民から「感謝」の言葉を聞いた。(勇)
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