大分建設新聞

インタビュー

加来 浩祐さん(㈲加来塗装社長)

2020年06月17日
 加来社長は「自分は昔ながらの職人から叩き込まれた最後の世代」と言う。
刷毛を大切な道具として扱う話、塗りの時の刷毛使いにこだわりを持つ話を聞いていると、なるほど職人だと頷ける。
 しかし「職人としての基本的な技能は承継していかなければならないが、雇用や現場の施工方法などは、時代の流れも考慮しなければならない」と話す。
 今までは、求人を出して応募してきた人を採用してきたが、よその色に染まった人を扱う難しさを自身の半生で振り返り、採用について考え直した。
それは「無色の高卒の生徒を採用して、時間をかけて加来塗装の色に染めることはできないだろうか」と、塗装業ならではの色にこだわる観点で考えたという。
そこで、地元竹田市にある私立の竹田南高校の生徒を採用してみようと決断した。
2人を研修生として受け入れ、そのうちの1人の〝種子"が6年の時を経て今、大きく実を結ぼうとしている。
 今年の4月で入社7年目に入った同高出身の大森一輝さんが、社長の期待に応えるほどに成長した、と嬉しそうに話しながら「基本を叩き込むのに1年、形づくりに2年、やらせてみて経験を積ませながら仕上げるのに2年。やはり修行には最低5年はかかる」と振り返る。
 大森さんは、コツコツと自分で考え現場で試すという地道なチャレンジを繰り返し、いくつもの壁を乗り越え、社長から与えられた5年間を着実にこなし、ついに現場を任せられるところまできた。
 加来社長は「教えられる基本はすべて教えた。技能的には問題ない」と明言した。足りないのは、経験。しかし大森さんには恵まれた環境があった。
加来塗装には、大分市の塗装会社で働いた経験豊富なベテラン職人がいて、今、その人が大森さんとコンビを組んでいる。
 「初めて出会った案件については、ベテラン職人が選択肢を投げかけ、大森さんに考えさせている。とても良い関係ができている」と、社長もコンビの成果に期待を寄せている。
大森さんの将来について、「1級技能士となり1人の職人として終生生きていくのか、はたまたさらに上の施工管理者となって現場全体をコントロールする立場を目指すのか、目の前に大きな岐路がさしかかろうとしている」と語りながら、「今まで通り、大森さんが自分で考えて先に進む道を決めることに期待している」と、将来を彼自身に託して話を結んだ。
 ㈲加来塗装は、1975年、加来塗装工業として竹田市で創業。87年に法人成。
従業員は3人と少ないが、その職人的技術には定評があり、建築塗装(改修含む)、防水(同)、住宅リフォーム工事を得意とする。
主な取引先は㈱松井組、㈲川野組、㈲宮成工務店で、営業エリアは、竹田市全域と豊後大野市、大分市の一部。


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