大分建設新聞

インタビュー

後藤 貴之さん(豊肥振興局豊後大野水利耕地事務所長)

2015年08月17日
 豊後大野水利耕地事務所勤務は初めて。これまで農業土木畑一筋に歩いてきたが、「一度は大分県を代表する中山間地域の大農業地帯であるこの地域で仕事をしたいと思っていたので念願が叶った」と、笑みがこぼれた。
 思い出深いのは、中部振興局勤務の頃、大分市丹川地区で大区画ほ場整備をしたときのこと。工事が終わったのを記念し、近くの小学生を招いて麦踏み体験をしてもらった。テレビの取材もあり「事業のPRになる」と期待していたら、放送は「小学生が麦踏みをした」の内容だけ。拍子抜けしたが、その後、ほ場全面に麦が美しく実る景色は今でも忘れられないという。
 管内には、11の土地改良区があり、一部竹田市も含む豊後大野市内の幹線用水路約300㌔を管理している。「用水路が長く、管理が大変」と、管内を回っての感想。老朽化した水路の改修や暗渠排水の工事などを順次進めているが、「いかんせん予算が少ない。早急に整備が必要な箇所も多く、建設業界からも地元の声をあげてもらえればありがたい」と。
 「農家がもうかる農業をするためには、農地の集積は不可欠。担い手が借りやすくするためにも、その障害となっている水田の排水対策や土地基盤整備を推進したい。豊後大野市の農業が元気になれば、県全体の農業を元気にできる」と、農山村振興部や生産流通部など営農部門の連携強化に努める。その代表として、27年度から連携強化のモデルになっている経営体育成基盤整備事業「三重東部地区」の整備に力を入れている。
 後藤さんは「農業土木事業は、事業制度や補助が拡充され、水路改修などの要望は多くなったが、要望に応えるだけの予算が足りない。農家の声が国に届き、農業農村整備事業予算がもっと増えることを、切に望んでいる。今の予算では農業の競争力を強化するための事業推進が加速しない」と。
 防災・減災についても、ため池の改修には、1億円程度の工事費がかかるケースが多い。以前は、地元負担率が7%で、農家には重い負担になっていたが、最近は国や県、市の補助率が拡充されている。「せっかく充実してきた補助金制度も、活用できなくては意味がない」と、国の事業予算アップの必要性を語る。
 「大分県のインフラ事業は、建設業界の方々の活躍で守られている。本当はもっと待遇が改善されるべき。若い人に希望の持てる職場になってほしい」と話した。


略歴
九州大学農学部農業工学科を卒業して、昭和60年、県職員に。東京事務所参事や大野川上流開発事業所長を経て、今年5月に現職。臼杵市野津町出身。54歳。


 
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