大分建設新聞

インタビュー

光浦 高史さん(建築家・DABURA主宰)

2014年01月16日
 光浦さんは、リファイニング建築家、青木茂氏の愛弟子だ。次代を担う若手建築家として「自分たちにとっての仕事のテーマは何か」を追い求めている。「青木先生は高度成長期とバブル期を経て、ハードとしてのリファイニング建築の手法を築かれた。これからはハードだけでは再生できない、ソフト寄りの手法が必要」と語る。そして、ガレリア竹町商店街の近くに残る、古びたフンドーキンマンションで開かれたアートプロジェクト「循環」にかかわった。  このプロジェクトは、全国からアーティストが集まり、住民不在のこのマンションの各室でアート制作を行う、というもの。昨年末まで、約3ヵ月にわたって制作活動に取り組んできた。光浦さんは、「家守」として事務所をこのマンションの一室に移し、建物や設備の安全性を細かにチェックして、アーティストの活動をサポートした。同時に、このマンションの保存や再生の在り方を模索している。  このプロジェクトを通じて、フンドーキンマンションにアーティストが集い、市民が集い、建物が彩られ生命が吹き込まれた。アートを通じた街のコミュニケーション活性化の好事例にもなり、メディアにも取り上げられた。建物が動き、街を動かしたことに確かな手応えを感じた。これが、光浦さんが目指す「ソフトに深く入り込む建築家」なのだろう。  「建築家の仕事とは呼べないかも」と言うが、建築家としての専門的な知識やスキル、さらに熱い思いがあってこそ可能な仕事だ。この建物を「使われながら残す、そのうちに好きな人を増やし、収益を出し、耐震補強が可能なら再生してもいいだろう」と、やさしい眼差しで見つめる。光浦さんのような建築家らしくない建築家が、重要な役割を担う時代が来るだろう。


建築家としてのテーマを模索する光浦さん

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