大分建設新聞

インタビュー

白石 安依さん(別府土木事務所)

2013年12月21日
 佐賀大学理工学部を卒業し、県職員になって2年目。別府土木事務所河港砂防課河川港湾班所属の技師だ。見た感じは、「今どきの女の子」だが、記者への説明ぶりは、堂々たるプロの技師。  白石さんは、河川事業に携わる県内各土木事務所の技術者が、新技術、新工法を採用した「多自然川づくり」の事例発表で、自身が取り組んだ「平田川におけるトビケラ対策」を発表、優秀賞を受賞した。その後九州地方整備局の「うるおいのある川づくりコンペ」で部門別優秀賞を、埼玉県での「25年度多自然川づくり会議」で、28事例の中から優秀事例に選ばれた。また、福岡市であった「応用生態工学会福岡2013―九州の応用生態工学の事例と研究」の発表会で、国交省職員や大学教授などの発表を抑え、口頭発表賞(新納竜一同事務所主任が代理発表)を受賞した。  この事例は、別府市を流れる平田川で、頻繁に発生するトビケラを抑えるため、白石さんや同じ課の職員たちが、どのように発生を抑えたかを発表したもの。  平田川周辺では、以前から住民や保育園から、トビケラの苦情が別府市に寄せられ、同事務所と市は、住民らと協力して川の清掃などをしたが、根本的な解決には至らなかった。そこで、白石さんが入所した24年頃から、事務所として、本格的な調査を開始。市内を流れる他の川との水質比較や、川に住む生物の調査、河道の構造などを確認した。その結果、川の流れが速く、水深が浅いため、魚が住みづらく、トビケラの幼虫の天敵がいないことが、発生の要因との結論にたどり着いた。そして、対策案をいくつか検討し、水深の確保による肉食生物の繁殖促進と、流れを緩やかにすることで魚の住める空間づくりに取り組むことにした。  まず、24年8月に、水深確保と流速を落とすため平田川の2ヵ所に河床ブロックを設置。経過観察のため、水深が深くなった場所の生物調査をした結果、トビケラの幼虫の外敵になる、ナマズ、ハゼ、エビなどが増え、幼虫の発生が未工事場所と比べ、約97%減った。外敵になる魚などの行動範囲の拡大、流速ダウンによる土の堆積で、トビケラが住めない環境ができたという。  各発表会では、この単純に見える水深確保と流速低減という方法が、害虫の異常繁殖を抑え、生物がたくさん生息する昔の親しみのある川に変化させることができるという事例が評価された。
 

河川のトビケラ対策を発表し高い評価を受けた白石さん
 
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