栗田富夫さん(建設システム社長)、ITで現場の負担を軽減
2009年02月10日
かつて、現場技術業務委員として民間から旧建設省に出向、現場監督も検査も担当した。当時、毎晩夜中の3時まで自分で書類整理をしていた。「これでは若い技術者が逃げていく。なんとかしなければ。現場をペーパーレスにしたい」と開発に取りかかったのが同社の土木施工管理システム「デキスパート」に結びついた。当時はパソコンの黎明期で、マウスもなく文字ベースの、今の千分の1程度の能力のパソコン。パソコン用のCADもなく、ワープロも低機能なものがようやく生まれつつあった。インターネットも米国で誕生前夜、という時代だ。今、ようやく本格的な普及段階に入ったCALS/ECを、20年以上前に先取りしていたのだ。
フェアでは「建設業のIT経営について」講演。現在の制度面や発注者の体制面で受注者の負担が大きくなっており「現場の技術者の苦労を痛切に感じる」と語りかけ、自らの経験をもとに利益を確保し、工事成績評定をアップさせるための実践的で細かなポイントについて紹介した。そのうえで、利益を上げるため、社内で情報を共有し、会社全体で各現場の工程管理、利益管理をし、工期を短縮して労務費・機械費を削減することが必要だと述べた。この点、栗田社長は本紙のインタビューに答え「デキスパートのようなITの活用で、現場代理人の負担を軽減し、会社として現場管理することが可能になる」と話した。
大分県では来年度から設計業務で電子納品が試行される。だが全国的には既に都道府県の3分の2が導入している。「この流れは加速度的に速まる」と栗田社長は予測する。栗田社長が現場のペーパレス化を志したパソコン黎明期から20年を経て今、急速にその理想が高度なレベルで全国で実現しようとしている。「これまでは現場一つひとつが会社のようなものだった。それぞれがもうかったり損をしたり。現場が多い時代ではそれでもよかった。しかしこれからは少ない現場で勝負になる。だから、確実に利益を出すことが必要。現場を会社で管理すれば、会社が強くなる」と力説する。「建設業は強くなっていただきたい」栗田社長の願いだ。