大分建設新聞

インタビュー

御手洗達雄さん(御手洗造園社長)

2008年05月09日
 御手洗さんは日本を代表する庭師。18年度の「現代の名工」に選ばれ、今春の黄綬褒章に輝いた。「庭をつくるのは景色をつくること、そして夢を描くこと」と語る。眺めるだけでなく、中に入っていきたくなるような、誘い込むような「生きている庭」を造るのが信条だ。専門家から評価されるより、素人のお客さんから「わぁ~山に入ったみたい」と喜んでもらうのがうれしいという。伝統的な手法にはこだわらず、大胆なアイデアをどんどん取り入れる。切って捨てるような小さな枝も、庭の中で生き生きとした樹木になる。幼いころに親しんだふるさとの原風景の、滝や小川など水の流れを取り入れた庭が特徴的だ。  意外なことに、庭師としてのスタートは遅い。数多くの転職歴の最後、30歳で庭師の道に入った。ところが入社した造園会社は半年で倒産した。自分で会社を立ち上げ、昭和44年、平和記念公園で開かれた造園展に下請け業者として出展。それがいきなり最優秀賞。以降40年にわたり、毎年春秋、造園展で水が流れる庭をつくり、気に入ったお客さんから注文を受けてお客を増やし、腕を磨いてきた。  奥さんの節子さんとは二人三脚で歩んできた。節子さんは営業も現場仕事も全てをこなしてきた。今では2人の娘さんと、それぞれの娘婿とで会社を支える。家族ぐるみの経営だ。  業界では後継者の育成が大きな課題。長年にわたり造園技能検定委員、全国団体の技能講師として、後進の育成に努めている。「頑張ったらそれだけ答えが出る世界。常に研究心を持って新しい提案をし、いかに早く仕事を仕上げるかが大切だ」と語る。「たとえつらいことが多くても、お客さんの笑顔が見られるのはとてもうれしいこと。そのためには、火の玉のように働け。休むのはいいが、だらだらするな」と、若手を叱咤(しった)激励する。  「うまいと思ったら最後。同じ材料は2つとないし、仕事に完璧はあり得ない。そんな甘い仕事ではない。小さな空間でも、限られた予算でも、どれだけお客様に夢を与えることができるかが大切だ」。自分に刃を向け続ける名人だ。68歳。


「おおいた人と緑ふれあいいち」のモデル庭園で

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