大分建設新聞

インタビュー

浦畑 一久さん(笹原建設開発課長)

2007年11月24日
 土木工事に携わって32年。この7年間は中津城の石垣改修、復元の仕事に打ち込んだ。地元の人たちは、浦畑さん(58)を称して「現代の石垣名人」と呼ぶ。  その石垣改修、復元工事も一段落。「平成12年の工事開始当時は、現代工法には自信があったが、伝統的技法については無知といってよかった」と言う。  石垣改修に携わり文化財関係者や学者の指導を受け、実際工事にかかってみると、言葉では表現出来ない昔の職人の深い技と、心が感じられた。違和感のない、落ち着いた安らぎを覚えたが、それが試練の始まり。卓越した先人の技術力には、心底感服した。浦畑さんの話からは、そんな思いが伝わってくる。もちろん、「信用と名を残すためなら、採算抜きでやれ」という笹原則夫社長のゲキと、理解がなかったらとても出来なかった仕事だ。  中津城の石垣は400年の歴史を刻んできた。「九州では、現存する唯一の、穴太(あのう)積みの石垣で、地域の貴重な財産である。一般土木の技法を使うことは、文化財の破壊であり、罪であると言われた時は、正直打ちのめされた感じだった」と、振り返る。  積んでは崩す毎日。気持ちを込めて積む毎日。鍛えられ、育てられることで、昔の職人たちがイメージしたことを、頭で理解するのではなく、肌で感じられるようになったと言う。  何が自分に足りないのか?何を求めなければならないのか?自問自答するうち、自然の力に逆らわず受け入れ、頭、数字などに惑わされず、一生懸命、過去の視線(昔の職人たち)と将来の視線(子供たち)を感じながらやることが正解ではないのかと思えるようになった。やはり、何かをやり遂げた人は考えや感性が違う。  「石垣は大小の石の組み合わせで生きてくる。その地域で使える素材を活かすため、同じ石垣は2つと無い。工事に携わった人間にも言えること。それぞれが、和合、調和し、それぞれを生かすことになる」。当たり前のようだが、組織や人間の在り方にも言えることだろう。「こういう仕事に出会えたことは、自分の人生にとって、大変貴重だった」と語る。  請われて寺の修復工事をすることもある。




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