大分建設新聞

インタビュー

後藤 喜文 さん(52)(九州木材加工)

2007年11月24日
 大分市南鶴崎に来年八月完成を目指して建設中の高級賃貸マンション「テリオ鶴崎」の建築工事が順調に進む。このマンション、県内では初めて不動産流動化の手法を活用しての建設だ。その仕掛け人が専務の後藤さん。  不動産(資産)の流動化とは、特定の資産をその資産の保有者(オリジネーター)から分離し、その資産が将来生み出すキャッシュフロー(不動産の賃貸料収入や売却収入など)を裏付けに、有価証券(社債や株式、受益証券など)を発行し、投資家に販売する一連の流れのこと。流動性の乏しい不動産なども、小口化・証券化することによって売買がしやすくなるほか、低コストの資金調達が可能になることや調達・運用サイドともリスクに見合ったリターンが見込めるなど様々なメリットがある。  だが、木材製材加工や家具・建具製造、内装木工事が本業の同社がなぜ、地方ではまだ一般的でないこの手法を用いて建設することになったのか?  その理由について後藤さんは、「本業の市場規模は限られているしデフレで価格も頭打ち。このままでは業績の拡大が望めないので、新たにマンション開発や住宅リフォームなども手掛けるようにしました。しかし一口にマンション開発と言っても、土地取得や建設資金の調達は大変難しいのが現状。そこで多方面から資金調達が見込める不動産流動化の手法に目を転じたわけです」と話す。  さらに「バブル崩壊後、地方には動かない土地がたくさんある。それを流動化すれば地方経済は活性化するから、当社の使命も達成できるし一石二鳥の効果があると考えたわけです」と付け加えた。  とはいえ、このプロジェクトを立ち上げたばかりの十六年春は、金融機関や投資家などに地方都市の大分で行うことの意義をなかなか理解してもらえなかったと言う。  「少し早かったのか、地元金融機関などでは不動産流動化の考え方そのものが一般的でなかったし、都銀や外資系金融機関の中には『何で大分なの?』とか『大分ってどんなとこ?』なんて言う人もいて…」と、当時を思い出して苦笑い。  しかし「これからは違う」と言う。「少子化で一人っ子同士の結婚が増えてくる。この場合、どちらかの親が家を持っていれば自分たちで建てる必要がなく、ある時期までは賃貸マンションでいいわけです。今後、付加価値の高い魅力ある賃貸マンションの需要が高まります。需要があれば物件の価値は上がり、投資家にとっても運用する側にとっても魅力的な金融商品になるわけです」と、将来をしっかりと見据えている。  テリオ鶴崎に続き、大分市内で2~3件の賃貸マンション建設計画を進めているという後藤さん。最後に「地方も建設業界も厳しい状況ですが、こういった取り組みを提案・実行することで、地元の人々が少しでも元気になるようお手伝いしたいと思っています」と、笑顔で締めくくった。




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