山本 茂 さん(47)((株)川原建設)
2007年11月24日
「岩工房」は、二重の造形網を型枠として使用する同社独自の擬岩築造工法。型枠の造形網を状況に合わせて屈曲させ、多サイズ、多方向の凹凸を付けることにより、形状や亀裂、しわ、くぼみまで細部にわたって周囲の岩と同じように造形することが可能なうえ、施工場所を選ばない。
山本さんは、この工法を採用した国土交通省発注の「平田地区護岸補修工事」で、経済性の高さと周辺環境への影響抑制が高く評価され、十七年度の九州整備局長表彰と山国川河川事務所長表彰を受けた。
「この工事は、当社が工法などを提案をする概算発注方式だったのですが、現場が国定公園内にあるため、国交省からいくつか要望があり、それをクリアするために、やむにやまれず(笑)独自工法を開発することになったんです」と山本さん。
その要望とは、①周辺景観との調和②周辺環境への影響抑制③コスト削減④工期短縮-など。当初、コンクリート工場で岩状の物を造ってみたが、やはり大まかでも岩の形の基になる物、例えば型枠のような物が必要だとわかってきた。
しかし、コストと工期を考えると型枠を使う既存工法の流用は不可能。焦る心を抑えながら、何か良いものがないかと資材店を回った。欲しいのは『強度があって微妙な造形も可能』な材料だ。
「いろんな材料を触ってみるうちに、金網の感触が良いことに気がついたんです。これだと微妙な岩肌の表情も出せるし、2枚使えば強度も出るんじゃないかって」。これが正解だった。
まず最初に、20mm目程度の網で大まかな岩の形を作り、現地の岩肌に合わせた無機顔料を練り込んだ着色コンクリートを流し込む。その際、網目からモルタル状のコンクリートが染み出してくるが、その上から3~5mm目の仕上網を被せてくぼみやしわ、亀裂などを付ける。最後は仕上網をはずして刷毛などで表面を整える。テストブロックを作ったが、思った以上の出来だった。
今では国交省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録され、問い合わせも全国各地から来るようになった。年内に特許も取得できそうだという。
「国交省の皆様のご理解があったからこそ『岩工房』ができたわけですが、今後は山国川だけでなく、いろんな所で工事をしてみたい」と目を輝かせた。
このほど、大分大学工学部の協力で強度試験を実施。コンクリート工学の権威である佐藤教授のお墨付きをもらい、近くNETISへ再登録することが決まった。