大分建設新聞

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人手不足が顕著に 専門工事の実態調査〈県建産連〉無料

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2023年05月15日
 県建設産業団体連合会(県建産連)と大分県は12日、2022年秋に専門工事団体へ実施した「雇用実態に関するアンケート」についての意見交換会を開いた。アンケートでは人材不足が顕著に表れ、建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用がされていないなど、専門工事業の問題点が見えてきた。
 県建産連から県管工事協同組合連合会、県電気工事業工業組合、県建設型枠工事業協同組合、県鳶土工業連合会の各理事長や会長が、大分県からは土木建築部の五ノ谷精一参事監兼建設政策課長らが出席(県の役職は当時)。
 県建産連の利光正臣会長が「CCUSは、処遇の改善につながっていない状況。きょうはアンケート結果について、団体の代表者、または企業経営者としての意見を出してほしい」などとあいさつ。
 五ノ谷参事監が「来週から新体制になるが、今後も意見交換の場を設け、雇用改善につながるよう努力していきたい」とあいさつし、萱島仁主幹(総括)がアンケートの結果を報告した。
 アンケートは県建産連に加盟する専門工事業の8団体を対象に行った。年齢構成、女性や外国人労働者の割合、休業規定や年収、人材確保の状況と育成策、CCUSなどについて聞いている。
 女性の割合では、技術・技能職数の全体に対して3・6%と低い数字で、これは全産業平均41%と比べても非常に低水準だった。外国人労働者数は、全体に占める割合が3・09%で、型枠工、鉄筋工、塗装防止工、鳶土工で割合が大きかった。
 休業規定では「4週6休」が最多で、次に「4週8休」「4週4休」となった。人材不足では、技術職で52%が「不足」、31%が「大変不足」、技能職で「不足」が50%、30%が「大変不足」と回答しており、80%以上が不足の状況。
 また、採用実績でも40%が「まったく採用できていない」と回答し、31%が「計画の30%以下」、12%が「計画の40~60%程度」などとなり、人手不足が大変顕著となっている。
 人手不足の中、各団体と加盟企業は人材確保と育成に力を入れており、資格取得や研修への参加支援は多くが実施。会社としても「賃金水準の向上」「休暇制度の充実」「福利厚生の充実」など、さまざまな取り組みをしている。しかしながら、女性活躍では専用トイレや更衣室の設置などをする企業が増えている一方、何も対応していない企業も多い実態がある。
 CCUSでは、約半数が「取り組み予定なし」、効果や必要性については、49%が「分からない」、16%が「取り組む必要性を感じない」と回答した。
 アンケート結果を発表後、利光会長が各団体の代表者へ問題点などを質問。人材育成や確保では「学校訪問や現場見学会、インターンシップ受け入れなどをしている」との声がある一方、「若い人には興味が持ってもらえない」「外国人材に頼らなければならない状況だが、実習期間を終えて帰国されると、また新たな人材を一から教育しなければならない。制度の見直しを」といった声も。
 また、後工程の団体からは「民間工事で工程が遅れることで、残業発生や休日確保が難しい場合がある。設計者まで声を届けないと、2024年からの残業時間の上限規制に対応できない」という意見もあった。
 給与面では「給与を上げるためには、安定的な会社運営が必要。相手がいる話なので、簡単に金額を上げてくださいとは言えない」「安全で簡単な仕事と一緒の給料額なら、他業種へ人材が流れてしまう」と、厳しい話もあった。CCUSでは、「県内では、利用できる現場がほとんどない」と、せっかくカードを作っても、活用できていない状況が報告された。
 五ノ谷参事監は、これらの意見を受け「後工程への影響が出ないよう、県では工程管理をしている。人材不足では、県も土木技術職が定員割れしている。県もさまざまな取り組みをしており、親御さんへのアピールもしている。女性活躍でも補助をしているが、女性の比率はまだまだ少ない。育成よりも、まずは確保をしなければ」などと答えた。
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