大分建設新聞

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災害時の大きな力に ドローンの河川巡視実験〈九州地整〉無料

行政・統計・データ県北地区
2023年03月17日
 翼を使い高速で飛べる新型ドローンを使った河川巡視の実証実験が16日、中津市耶馬溪町であった。耶馬溪ダム前から国土交通省山国川河川事務所まで、急峻な山国川の上空を25分かけ一気に25㌔を飛行した。映像はリアルタイムで東京の本省にも配信。実験をした九州地方整備局と山国川河川では「災害時の大きな力になる」と今後の導入へ向け手応えを語った。
 実証実験に使ったのは、翼の幅2・1㍍、機体の長さ1・2㍍、重さ約10㌔の「VTOL機」。通常のドローンのように四隅のプロペラで垂直離着陸ができるほか、翼を生かした水平飛行の最高速度は約100㌔。飛行距離は50㌔に達する。
 この日、機体は耶馬溪ダム分室駐車場を垂直離陸すると、一気に高度約100㍍まで上昇、そこからは翼を使い山国川の上を水平飛行した。上空からの画像はリアルタイムで河川事務所や東京の国交省へ配信され、九州地整ではDX担当者らが見入った。時折風や雨が降るあいにくの天候だったが、曲がりくねった川の上空から外れることなく、同事務所の対岸に無事着陸した。
 実証実験では建設電気技術協会が協力。河川管理のため張り巡らせている光回線を活用し、光回線とドローンを電波でつなぐ基地局を4カ所設置、遅延なく機体を遠隔操縦できる工夫をこらした。20回以上の試験飛行を重ねこの日を迎えていた。
 機体は途中、国道10号の新山国橋や東九州自動車道の上空を通過する「チャレンジングな試み」だったが、地上から100~120㍍と安全マージンをとった高度をとり無事通過した。九州地整では「自営の通信網を用いた無人航空機の長距離飛行は全国初の試み」と力を込めた。
 通常の河川巡視では、25㌔を車でまわると1時間はかかるという。長距離を飛べない通常のドローンでは、電池交換などのため9回の離着陸が必要で、4時間はかかることから、25分の飛行時間は「10倍の時短効果」と胸を張った。
 しかも、空中で静止したり微速移動したりと、これまでのドローンの動きもでき、地震など災害時には、橋や護岸などに近寄って詳しく異常を調べることもできるという。離れた安全な場所から飛ばし、迅速に現場上空を飛行することができ「状況把握や災害復旧へ大きな力になる」と話す。平時も河川巡視などを効率化でき「河川管理業務を変える力がある」とも話す。
 光回線につながり遅延なく遠隔操作できる自営通信網の整備は、今後の無人除草機や無人巡視船、巡視ロボットの運用につながるという。九州地整では山国川での実証実験を5月まで続ける予定で、その後は「どこかの河川にシステムを設置し、導入へ向け検討を進めたい」と話している。
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